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クリケットとピッチ

クリケットの競技性に最も影響を及ぼすピッチ特性は、初心者や観客にとって最もわかりづらい事柄の一つ。今回はピッチについて出来るだけ丁寧に解説します。

 

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SCG3日目

目次

ピッチとは?

グラウンド中央に位置するおよそ22メートル×3メートルのエリア。グラウンドの他の部分と違い、ピッチはより硬く、芝も短く、平坦に慣らされている。

クリケットはボーラーがこのピッチに弾ませた球をバッターが打つスポーツ。従ってピッチはグラウンド上のほぼ全てのプレーに影響を与えると言えるでしょう。特に天然芝のピッチは時間経過でその特性を変えるためプレイヤーはその都度状況判断し、戦術を変えなければいけません。

 

ピッチはどのように作られているのか?

試合10日~14日前

まずは水撒きから。表面から地中10㎝まで水分が浸透するようにたっぷりと時間をかけて水をかけます。ピッチに使われている土は意図的に水はけを悪くして水分を保持する特性ががるため、水やりのあと乾かすことによって地面の下まで均一な硬さを得られます。

 

試合9日~5日前

ローラーで慣らせるぐらい乾いたとグラウンドマンが判断した後は、1~2トンのローラーをピッチの上に走らせ、表面を硬く平坦に仕上げていきます。

 

試合4日前~当日

ピッチを限界まで硬く仕上げた後は芝生を徐々に短く刈る作業。10~20ミリあった芝を毎日1ミリずつ短くしていき、最終的には4ミリ前後にします。

 

試合当日

芝が剥げてしまった部分を修復し、ラインを引いて終わり。なんて大変な作業なんでしょう。

 

ピッチの特性

 ・バウンド後の速さ

・バウンド後の高さ

・バウンド後の横変化のしやすさ

・バウンド後のターンしやすさ

・平坦さ

・劣化速度

 

速さ

速いピッチ

バウンド後ボールがどのぐらい減速するかが基準となるため、バウンド前後の球速に差が少なければ少ないほど速いピッチと呼ばれます。バッターとしてはピッチが速ければ速いほどタイミングが取りやすくなって打球後の得点率が上がる一方、打ち損じやミスショット後のキャッチの確率が高くなるためボーラーにとってもメリットがあります。この結果ランレートもストライクレートも高くなる傾向に。

 

遅いピッチ

逆に遅いピッチは初速と終速の差が大きくなり、タイミングが取りづらくなるためバッターはあまり攻撃的なショットをしないようになります。特性的に速球のリターンが少なくなり、スピナーの出番が多くなっていきます。速さはピッチの硬さに大きく影響されるため、コンクリートに人工芝を貼ったピッチや、日照時間が長いオーストラリアのピッチが速いとされています。

 

バウンドの高さ

ボールがピッチに弾んだあと跳ねる高さ。速いピッチとほぼ同じで、バウンドが高ければ高いほどランが取りやすくアウトになりやすいです。また、前進回転系の変化球はバウンド後跳ねる特性を持っており、それらを投げることが多いレッグスピンもバウンドが高いと有利になります。ファーストボーラーは速く高いピッチではよりボーラー側にバウンドさせ、短い球で勝負するのが効果的とされています。一方、スピナーにとっては低い方がバックフットで打たれる割合が減るためエコノミーレートが下がる傾向にあります。

 

バウンドが高い&ピッチが速い=ファーストボーラー有利

バウンドが低い&ピッチが遅い=スピナー有利

 

横変化のしやすさ

クリケットボールは丸い形をしているものの中央に縫い目(シーム)があり若干出っ張っている構造のため、ピッチに弾んだあと横に変化する事があります。変化が大きくなる条件は芝が多く残っていること。これらは俗にグリーントップと言われ、テスト初日のバッティングが難しい理由の一つです。ピッチ上の芝は大体2日目ぐらいまでしか残らないためキャプテンがフィールディングファーストを選択する理由となり得るケースと言えるでしょう。また、芝が残っていると後述するようにターンもしづらくなるためテストの4~5日までは中々スピナーに出番が回って来ません。グリーントップはイギリスやニュージーランドなど、降雨量が多く寒い地域で良く見られます。

 

ターンしやすさ

回転系のボーリング(レッグスピン、オフスピン、レッグカット、オフカット)がバウンド後どれだけ横変化(ターン)するか。

乾いていて土がポロポロになっていると変化が大きくなる傾向にあるため、テストマッチのように試合中ピッチに水を与えることがルールによって禁止されているフォーマットでは3日~5日目のような試合後半は水分量が減り、ターン量が増えます。シームとは逆に、芝が多いと変化量が減ります。1年中気温が高く降雨量が少ないインド、パキスタンスリランカ等のアジアのピッチは上記の条件を満たすため非常にターン量が大きい傾向にあります。

 

平坦さ

読んで字のごとく。平坦であれば平坦なほどバッティングは簡単になります。プロのボーラーといえどもバウンド後何の変化も無いピッチでバッターをアウトにするのは至難の業。また、ピッチは平坦を目標に作られるはずなのですが、劣化したアーティフィシャルピッチや、準備段階で水分量の調整を出来なったターフピッチで稀に失敗作が見られます。ピッチの状態がデコボコになると、バウンド後急に跳ねたり転がったりし、130km以上の球速がざらにあるプロの試合では非常に危険なため、アンパイアの裁量で試合自体が中止にされることもあります。

だが、ケースによってはデコボコの方が良い時も(後述)。

 

劣化速度

ピッチは土や草を使って作られており特性が刻一刻と変化するため、1日で終わる50オーバーや20オーバーの試合よりも、5日かかるテストマッチでピッチが劣化する速度が重要視されます。劣化しないピッチは引き分けが多くなるため、最近の傾向ではちゃんと劣化しないピッチの評価が低くなりがちです。

良いピッチ悪いピッチ

一見平坦で打ちやすいピッチが良さそうに思えますが、5日以内に決着をつけなくてはならないテストマッチでは打ちやすすぎるピッチは引き分けが多くなるため、非常に嫌われます。逆にODIやT20のような1日で終わる形式ではバウンダリーが多い方が観客が喜ぶのでこちらは打ちやすい平坦なピッチが好まれます。

参考までにテストマッチの場合、ICCの規定ではピッチ特性は初日にいくらか横変化があり、2日目3日目は草が剥げてピッチが落ち着きバッティング有利に。4日目5日目で乾燥してターンが増え、ピッチ表面に蓄積したダメージでボーラー有利となるのが望ましい、とあります。

ICCの規定で国際試合ではピッチのレポートがアンパイアにより作成され、悪いレポートが続くとそのグラウンドは一定期間国際試合を主催出来なくなります。変化がありすぎてもダメですし、無さすぎてもダメなのが面白いところ。

ピッチの影響

 ピッチの特性によって有効なボーリングスタイルも変わるため、必然的にその国のピッチに合ったスタイルのボーラーが増えます。スピン有利なアジアであればスピナー、速球有利なオーストラリアであればファーストボーラー、スイング&シーム有利なイングランドであればスイングボーラーが各国のエースであることが多く、テストマッチホームチーム有利とされる一因です。

マチュアレベルでもピッチはとても大事であり、過去記事にもあるようにどのようなトータルを目指すかの指標になります。

日本一わかりやすい!ノーボールの処理!

公式リーグでプレーしている皆さんにとって、アンパイアのボランティアは大変ですよね。歴史が長いクリケットはそもそもルールが多く、数年毎に変更されています。試合中でも選手やアンパイア同士で解釈の違いで揉めることも多々あり。このブログでクリケットの各種ルーリングについて書くことによって微力ながらアンパイアさんの手助けになれればと思います。目指せ日本一のルール解説ブログ(今のところ唯一のため一番)今回はノーボールについてです。 

ノーボールとは

 ボーラーの不正な投球。様々なモードがあり、投球後ペナルティが発生する。

 

アンパイアの判定フローチャート

 はい、になったらノーボール、いいえになったら次に進みます。投球がノーボールと判定された場合、アンパイアはただちにノーボールとコールし、腕を地面と平行に上げます。

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これで安心

頻度が高いノーボールについて解説します。

 

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